事務局より

事務局より 2020年(令和2年)

令和2年12月号

「ゼミナール最前線」をスタート!
「あなたは何ゼミの出身?」は一橋卒業生どうしのキーワード。「ゼミの一橋」「ゼミなくして一橋は語れない」、我らが母校の原点はこれにあります。今の時代は学生が授業に出ないこと自体考えられないようですが、筆者のような(古き佳き)世代には「一般の授業にはあまり出なかったがゼミだけは出た」という人も多く、ゼミは世代を越えた大学のアイデンティティになっています。卒業して何年たっても「ゼミのことだけはいまだに関心がある」との思いには多くの人が共感するのではないでしょうか。

今年は「コロナ」で授業だけでなく、ゼミも春夏学期はオンラインでの開講でした。ゼミ本来の「自分の論点を説明し意見を表明する」「他のメンバーの意見と論点に耳を傾け議論を深める」場となっているのか、老婆心ながら気になっています。私達OBOGの多くが卒業後の様々な場で「あの時の議論や意見交換が活かされているなぁ」と実感しているだけに「母校のゼミは今どうなっているのかなぁ」と興味が湧きます。

そんな中、本誌は10月号から「ゼミナール最前線」をスタートさせました。「今ゼミではどんなことをテーマに議論しているのだろうか」「自らの将来のキャリアに対してどんな考え方や気持ちでゼミに参加しているのだろうか」など読者目線で各ゼミを取り上げていきたいと思っています。先生方や学生の両方に誌面にできるだけ参加してもらうことで、大学という「知の現場」に私達如水会員ももっと近づいていきたいと考えています。

学部ゼミの紹介に先立ち、初回からしばらくは「如水ゼミ」の様子をお届けします。初回(10月号)は「ヘルスケア&イノベーション」の面々が登場。講師幹事の城間波留人氏(平14商)からは「自らのキャリアや人生について考えるきっかけを提供し学生の真の成長の後押しをするのがゼミの最大の付加価値」とのコメント。感想を寄せてくれた3名の受講生からも口々に文系の一橋では馴染みのなかった医療業界で活躍する先輩の講話を通じ自らのキャリア形成を考える機会となったとありました。

どんな業界や企業でも生き残りをかけた競争は一段と激しくなっています。生き残りや発展は、人々や社会が欲しいと感じる「価値」をいかに提供していくかにかかります。自らのキャリア形成の過程で「どんな価値を生み出していくのか」「それをどんな方法で提供していくのか」を学生が考え、ゼミが学びと気づきの契機になっていけばと願っています。如水会の役割も一橋大学への単なるサポートではなく、サポートを通じ人材の持つ「価値」向上に貢献し下支えしていくことで、大学と如水会とがいわば「バリュー・チェーン」として連携を深めていきたいと考えます。 (事務局長)

令和2年11月号

頑張れ!後輩たち
いつの時代、どんな組織、いずれの世代においても「先輩・後輩の関係はありがたいなぁ」と感じることが多いと思います。如水会と一橋大生の皆さんとの関係も「先輩・後輩それぞれに対する思い」でつながっています。昨年7月の『週刊ダイヤモンド』では、如水会と一橋大学は「濃密なネットワークと結束が傑出した強み」との報道があり、「外から目線」で言われてみると改めてその強さを感じます。

昨年12月の「公認会計士如水会」では、公認会計士試験の「合格祝賀会」が行われ、合格者18名(合格総数36名)が招かれました。同会では5年前に合格ランキングトップ10から脱落したのを機に、会計士の先輩たちが「会計プロフェッショナル実務」の寄附講座や外国人会計士による英語講座をスタートさせています。「一橋が会計分野で他の大学に負ける訳にいかない」と先輩たちの心意気。監査法人アヴァンティア法人代表で一橋大学非常勤講師も務める小笠原直氏(平1経)からは「これまでは会計実務中心の勉強。AI時代のこれからはリベラルアーツの勉強の幅を広げていくべき」とありました。「実務のプロ」だけでなく「人間味溢れる会計士を目指してほしい」と先輩として心のこもったメッセージに筆者も大いに共感した次第です。

コロナ直前の2月に行われた「外交を盛りたてる会」。外務省OBや現役職員の方々、法学部の大学教授陣4名など27名が出席し、外務省入省内定の1名や外交官を目指す11名の学生の皆さんに「熱いエール」を送る場となりました。外務審議官の金杉憲治氏(昭58法)は「我らが後輩の皆さんの素質は十分、あとは心身を鍛え元気と自信を持ってきてほしい」と冒頭から仲間意識を持ってご挨拶。国際文化交流審議官の志野光子氏(昭62法)からは「外交の切迫した場面やどんなに苦しい時でも乗り越えられるのは外交官としての『パッション(熱意)』に尽きる」「国益を越え世界益の次元で仕事をしていきたい」と力強くメッセージ。また、突発の仕事で深夜に及んだ際、「ママ、今日の夕飯は?」「うん、今日の分はコンビニに置いてきたよ」のメールのやり取りも紹介。仕事と子育ての両立は男女を問わずますます大切なテーマ、氏に共感した学生の皆さんも多かったと思います。

最後に「如水ゼミ」です。「商社」担当の内藤善治氏(昭59商、三井物産)から「(如水ゼミが卒業要件から外れようが受講生が減ろうが)集まってくれる受講生がいる限りは一人でも絶対に続けていく」との力強い話。コロナで困難な中でも受講生が増えているのは、先輩たちの思いが通じているからにほかなりません。事務局はそんな光景をこれからもっと紹介していきたいと思います。どこにいても先輩たちは応援しています。頑張れ!後輩たち!!(事務局長)

令和2年10月号

学長交代に想う
この9月、母校では在任6年を務めた蓼沼宏一学長に代わり、一昨年まで副学長を務めた中野聡氏が新学長に就任されました。先ずは、昨年9月の指定国立大学の決定はじめ、蓼沼前学長自らが牽引されてきた大学改革の取組みに対し深く敬意を表する次第です。指定国立大学決定は、アジア諸国からみても国際水準で出遅れ感の否めない日本の社会科学の現状に対し、「社会科学の総合大学」としての研究成果やその発信において母校が「日本のリード役としての役割発揮が期待できる」と評価されたものです。今まさにその意義と責務を果たしていく段階にあり、中野新学長はその重責を担われることとなります。私達如水会と致しましても心より敬意を表しますとともに、期待をもって大学への支援・サポートを進めていきたいと思います。

蓼沼前学長は自ら立ち上げた有識者による円卓会議を通じ「日本の社会科学が解決すべき課題は何か」「下支えとなる大学教育あるいは長期的視点からの人材育成はどうあるべきか」を諮問し、その具現化に専心してこられました。

AIやIT技術はいうに及ばず、国際間の競争は先端技術分野で激しさを増しています。国の競争力の源泉となる大学教育も理工系重視となる傾向は否めません。デジタル社会の発展は日進月歩、デジタル技術に通じた理工系人材の開発こそが企業のみならず、国の発展をも左右することになります。そうした中で「何故いま社会科学なのか」であります。AI活用の先にAIでは解決しえない問題が拡大しており、法学、経済学、経営学の領域はもちろん、哲学や倫理学など人文社会科学の総力を挙げた価値判断こそが解決の鍵となっていくのではないでしょうか。

昨年12月の名古屋での蔵前工業会との合同移動講座で、東工大の益一哉学長は「技術ばか、専門ばか」に陥ることなく人間社会の本質に通じた技術者育成のため、理系側にもリベラルアーツの重要性が増していると説かれました。AIやITによるデジタル未来社会を律する新たな規範や仕組みは「新たな社会科学」が今日的に担う領域となるのではないでしょうか。時まさに「コロナ」によるパンデミックがもたらした世界的な危機にあります。医学等の科学的知見に基づきながらも「人類の生存」という普遍的目標、国際社会の共通基盤の実現に向かって「諸科学の協働」が求められます。文系・理系の括りを大きく越えた協働こそが社会全体の課題解決の道筋となります。こうした時代背景の下で就任された中野新学長には、社会全体のあり様の中で長期的視点から大学のなすべき諸改革を発展的に継承されていくとの期待が高まります。「大学との連携強化」を課題設定している如水会も大学発展に向け一層の協力を進めてまいります。(事務局長)

令和2年8-9月号

代議員総会「対処すべき課題」より
さる6月8日に代議員総会が開催されました。代議員総数226名に対し出席代議員が6名(如水会役員も最低限の5名)と、新型コロナ感染リスクに対応して代議員の大半が出席されない異例の総会となりました。出席されなかった代議員はじめ、会員の皆様と今年度の「対処すべき課題」の共有を図りたいと思います。

コロナ禍により如水会事業は大きな影響を受けております。会館レストランや一橋クラブは予約キャンセルが相次ぎ、今秋以降の回復も見通せていません。「新しい生活様式」への移行によって消費需要や利用ニーズがどう変化していくか、会館運営上の本質的な問題として捉える必要も感じています。経常収支面では、令和元年度は当初からの経費削減努力もあり減収増益を確保したものの、2年度は一転、大幅な経常赤字に陥ることが必至の見通しです。「どこまで赤字を圧縮できるか」が事業運営上「待ったなし」の状況であり、このため「対処すべき課題」の第1に「経常収支改善に向けた取組みの加速・実行」を掲げました。経常赤字を改善するため、①会館建物設備の修繕費の削減、②年間計画に織り込んだ各事業の中止を含む大幅見直し、③職員の時間外勤務の削減徹底の3つの緊急対策の実行に全力を尽くします。また、イベントなどの計画については経費削減という切り口だけでなく、三密回避を前提に「実施方法そのもの」を見直してまいります。

課題の第2は「大学との連携強化」です。大学は昨年の指定国立大学決定を機に、ソーシャル・データサイエンス学部新設など新たなステージに踏み出し、日本の社会科学のリード役として研究や人材育成など「社会的価値」の創出に取組むと期待されます。更なる大学発展にいかに貢献するかという視点から、大学支援の積極化が今後の課題となります。大学と如水会の関係が相互の信頼に基づき緊密なものとなるよう「大学との連携強化」を図ってまいります。

課題の第3は「如水会組織の活性化」です。如水会員は今や約3万6千人、平成卒会員は4年前に昭和卒を上回り約58%。平成初期の卒業生も50歳代半ば、男女を問わず「現役バリバリ」で多忙を極めます。女性会員もどんどん増えています。世の中全般、企業や様々な組織においては会社本位から個人本位の考え方に変わってきているのではないか、そうした変化の中では組織を越えた「人のつながり」をベースとする同窓会組織はその有用性が増しているのではないかと思います。代議員総会でも、平成世代や女性会員からみて「より魅力ある如水会にするための具体策は何か」との質問もいただきました。会員構成やニーズが変化してきている今こそそれにマッチしたものに変えていく、活動の原点に立ち返ってその答えを出していきたいと思います。(事務局長)

令和2年7月号

佐野善作初代学長の顕彰碑を設置
今年は東京商科大学に昇格して100年、節目の年を迎えています。1920年の大学昇格時の初代学長は佐野善作氏。母校西正門から入り、図書館に向かって立つ銅像、旧邸宅が今は佐野書院に、と聞けば年代を問わず誰もが知る人だと思います。

この5月、佐野先生が生まれ育った静岡県富士市に眠るお墓に、如水会は地元静岡県内3支部の皆様とともに顕彰碑を設置しました。新型コロナウイルスの感染拡大のため除幕式は延期となりましたが、佐野先生のご遺族、地元静岡3支部の皆様、大学側から大月康弘教授兼前附属図書館長(昭60経)、田﨑宣義名誉教授(46経)、野村由美氏(60社)など多くの方々が参列を予定されておられました。昨年、佐野先生のお孫さんである佐野綾目氏から自宅に所蔵の約200点にも及ぶ貴重な遺品、遺作、手帳やメモなどの寄贈のお申し出が漆畑潔静岡県東部支部長(46商)にありました。その後皆様のご尽力により大学図書館、佐野書院への移蔵が叶い、これを機に顕彰碑を新たに設置することと致しました。

大変生意気な言い方ですが、筆者が心に描く佐野先生は「信念の人」そのものであったように思います。日本の経済学の草分け的な存在というだけでなく、初代学長として「大学経営」の先鞭を開き、信念をもって大学の運営指針を作りリードされたことは特筆される点ではないかと思います。佐野先生の学長としての任は21年の長きに及びます。残された手帳やメモの整理を通じ学長時代の先生の思索の日々を丹念に辿っていただいた野村さんに(不躾で失礼を顧みない質問ながら)「先生が沢山残された中で最大の業績は何か」とズバリ聞いてみると「やはりキャンパスの国立移転ではないか」との答え。将来の大学のあり方を考量する中で大学の「郊外化」を決断、如水会はじめ多くの大反対を乗り越え、手狭な神田一ツ橋から当時まだ草深い谷保村への移転事業を遂行、今日の大学町としての発展の礎を築いたのは佐野学長の手腕なくして叶わなかったとの指摘でした。折しも関東大震災によって一ツ橋校舎は崩落、震災前からの移転構想は一転加速し、思いがけない大きなリスクが「チャンス」に変わったのでありました。

現下のコロナリスクは、人々の「新しい生活様式」、会議や株主総会の運営方法はじめ「企業の行動様式」など社会全体の急速な変容をもたらしつつあります。野村さんも言及していましたが、今後も続発するであろう様々なリスクが人々や社会の変革を促す契機になる、大震災というリスクが大学移転構想を大きく動かしたことと重ね合わせ、歴史は何か定められている気がしてならないという実感を持った次第です。ちょうど100年後の顕彰を通じて佐野先生からそんなメッセージをいただいた気が致しております。(事務局長)

令和2年6月号

「コロナ」禍の影響と対応
新型コロナウイルスの感染拡大の深刻さが増しています。この会報が発送される頃にはどのような事態になっているのか予測もつきません。残念なことに4月号、5月号の海外宛発送分は配送所留置きとなり、海外の方にはお届けできない事態となりました。「緊急事態宣言」が発令され、外出自粛要請によってオフィスへの通勤を極力控え、在宅勤務を余儀なくされた会員も多いのではないでしょうか(「多かった」と過去形になっていることを願います)。一方で、医療関係者はもとよりライフラインや生活維持に関わる事業者、国や行政など公的な役割から「休む訳にはいかない」方々におかれましては、改めて心から敬意を表する次第です。

大学にあっても、卒業式の簡素化、入学式の中止、5月連休明けまでの休校、構内への入構禁止措置のほか、(如水ゼミも含め)Webによるリモート授業が進められつつあり、感染リスク拡大防止のための様々な対策が講じられています。新入生の皆さんにあっては折角の大学生活のスタートをこのような形で迎えることになり、加えて恒例の如水会による入学祝賀会も延期(時期未定)をせざるをえず残念でなりません。特に地方出身者の方には、慣れない土地に居を移し、リモート授業でも帰省もままならない状況の中で、「今はしばし我慢、我慢、頑張って」と呼びかけたい気持ちになってきます。

如水会にあっても、3月の支部長総会を中止、春に予定されていた各支部の総会は軒並み延期、当面予定されていた5年ごとの年次同窓会(S49卒の方々)も延期となりました。5月末に山形支部と共同で予定していた「移動講座」も来年の同時期に延期としました。今年は渋沢栄一の経営哲学にちなんだフォーラムを企画していただけに残念です。一橋フォーラム21や開放講座も当面延期、秋にシフトしての再開を期したいと考えております。

また、一橋クラブや如水会館のレストランも、3月以降予約キャンセルが相次ぎ既に来館者は激減しておりましたが、緊急事態宣言を踏まえ4月13日から5月下旬まで休業としました。この会報が届く段階で再開できていることを望むばかりです。

最後になりますが、「コロナ」禍とその影響を踏まえた私ども事務局の運営につきましても職員の「安全と健康を守る」ことを最優先に対応させていただいております。宣言の発令以降、代議員総会、理事会に関わる業務や年度末決算、(会合や行事の中止により会員の皆様からの投稿が減り薄くなりますものの)会報の発行など当面の必要業務を除き、会員サービス業務を見合わせ、職員の自宅待機の体制としました。
事態が収束し会合やイベントなどの再開と会員同士の交流が戻ることを祈るばかりです。皆様のご自愛をお祈り申し上げます。(事務局長)

令和2年5月号

如水会の課題
新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がっています。本号発送の頃には事態が鎮静化していることを願うばかりです。3月には如水会主催の「卒業祝賀会」も中止致しました。4月からの新たな進路への船出にあたり「感染リスクに巻き込んではならない」と理事会全員一致で確認。杉山理事長からは「卒業生や準備を進めてきてくれた在学生の皆さんの気持ちを想うと断腸の思い」とのメッセージが出されました。卒業後は、頼れる先輩として後輩学生の「心強いサポート役」となり、同時に我らが如水会の仲間として「末長く繋がっていく」ことをお願い致します。

3月7日に予定していた「如水会支部長総会」も中止しました。全国から(海外からも)駆けつける予定だった各支部長の皆様にとりましても大変残念なことでありました。この支部長総会では当面の如水会の課題認識もお伝えしたかったところです。支部長の皆様と同じ目線に立って会員の皆様とも共有したいと思います。

課題は大きくは2つ。1つ目は、「大学との一層の連携強化」です。母校一橋大学は、今年大学昇格百年、節目の年を迎えています。本誌4月号では「次なる百年、何を目指すか」をテーマとする蓼沼学長のインタビュー記事を掲載しました。大学は、昨年の指定国立大学の決定を機に新たなステージに踏み出していきます。AI普及など社会の急速な変化の中で創造的な社会の仕組みや推進基盤をどう形成していくのか。日本の社会科学のリード役として研究や人材育成の役割をどう果たしていくのか。そうした大学の取組みに対し、大学への様々な支援・サポートを通じて如水会自らも「社会的価値」の創出に参画していく、この課題認識の下に「大学との連携強化」を推進していきたいと考えております。余談ながら今回のインタビューの申込みに学長から即座に快諾いただきました。大学と如水会の関係は相互の信頼の下により緊密なものとなっています。

2つ目は、「如水会組織の活性化」です。如水会員は今や約3万6千人、平成卒会員は4年前に昭和卒を上回り今や約57%を占めます。「平成世代」は男女を問わず各企業や組織において「現役バリバリ」、多忙を極めます。女性会員もどんどん増えています。全国の各支部はじめ如水会の活動は、引続き昭和世代に支えられつつも「平成世代」の目線に立ち魅力と活力のあるものを志向する必要が増しています。組織への帰属意識や上下関係にみる人々の意識も会社本位から個人本位なものに変化する中、先輩・後輩や業種を超えたヨコのネットワークに支えられる如水会組織は、(我田引水ながら)その有用さが増しています。組織の活性化は、会員数の拡大と同時に、そうした人的ネットワークの拡大に資するため、どんな活動を進めるべきかも課題となっています。(事務局長)

令和2年4月号

AI時代における人材教育の方向性
昨年12月の名古屋での「AI・ビッグデータが創る令和の日本」をテーマとした「一橋大・東工大合同移動講座」については本誌3月号に掲載しました。会報に取り上げきれなかった質問/回答もあり、会場だけではもったいないので、「AI時代における人材教育の方向性」の観点から追加で報告したいと思います。

基調講演を担った日本総研フェローの高橋進氏(昭51経)に対し「(講演で示した)AI時代にあって『人を鍛えなおす』必要性の意味合いは?」との質問。同氏からは、「AIでカバーできない『人が持つ能力』特に論理的思考能力のある人材を育てる」「AIの世界では人材の『陳腐化』が加速し『学び直し』の必要性が増す」と説く一方、人生百年時代、各ステージの変化に応じて「常に新しいものを受け入れる力」「必要な時に思い切って自分を変えていく力」が一段と求められるとありました。また、AIができないことの一つに感性や情緒といった領域もあるが、創意工夫を積み重ねる人間ならではの能力や資質をいかに引き出し育んでいくか、早い時期からの体系化がますます必要となっていると提起されました。

AI社会の進展に伴い、「人文」いわゆるリベラルアーツの重要性が再認識されています。東工大の益学長からは「産業革命の時代から技術進歩の中で人間が置いてきぼりになってきたという議論が何度も行われてきた」「人間社会のあり様や人々の生き方、暮らし方をどう考えるべきか」「技術ばか、専門ばかに陥らない技術開発、それを促す開発者教育をどう進めていくべきか」、まさに理系側からもリベラルアーツ教育の必要性を標榜されています。

一橋大学の蓼沼学長からは「ソーシャル・データサイエンス学部を創設する狙いは、AIやデータサイエンスの基盤となる知識や分析手法の教育を通じて、社会課題の解決や社会経済システムの構築といった社会科学本来の役割をリードしていくことにある」「その役割を担える人材、プラットフォーマー等の規範や仕組み、ビジネスモデルを構築できる人材を育てていきたい」とし、これまでの人文社会科学研究の蓄積に立って「文理共創」による人材教育を推し進めていきたいと表明しています。

理系の側からも文系の側からも文理共創を目指すのがAI社会における人材教育の一致した方向性となっており、時代の要請にもなっています。「科学技術と人間」の問題は古くからあるテーマですが、AIやIoTの活用を通じて新たな「社会的価値」をどう創出していくのか、「科学技術と人間」の今日的に新しいテーマとなっています。私達如水会も大学へのサポートを通じて文理共創による「社会的価値」の創出に自ら参画していく、役割認識を新たにしていきたいと思います。(事務局長)

令和2年3月号

改めて海外留学の意義を想う
さる1月22日に、次期の一橋大学海外派遣留学生の壮行会を開催致しました。今年も120名に及ぶ長期派遣留学生はじめ沢山の皆さんを送り出せるのは、如水会にとっても大変意義のある嬉しいことです。皆さんからは「希望していた海外留学がかなって感謝の気持ちで一杯、与えられたチャンスを自分のためにどう生かすか考えていきたい」、中には「長期留学制度が魅力で一橋大学を目指したので夢が実現、本当に嬉しい」とありました。受験生からみた大学の「ブランド価値」向上にも一役買っているようで、如水会として長年の貢献が報われた気になってまいります。会員の皆様と共有しておきたいと思います。

昨秋には、大学の長期留学から帰国した留学生を迎え、一橋大学派遣交換留学生の会(HEPSA)の総会が行われました。第1期留学生で初代会長の田内直子氏(平1商、現味の素㈱勤務)からは「自分の留学を今振り返ってみると、その後の仕事や会社の中で苦しい時や転機を迎えた時に、あの時に“引き出し”を増やしておいたことがどれほど自分の心の糧や指針になったことかと改めて感じている」とありました。留学で何を学んだかというより、留学を通じ現地で見たこと、感じたこと、考えたことをその後においてどう生かすかがより大切との示唆を与えてくれました。

歴史を辿ると、渋沢栄一も徳川慶喜の命を受けた仏国パリへの初代「派遣留学生」。「これほどの産業発展をもたらしている仕組みは何か」「産業や事業を興す資金はどうやって集めるのか」「事業で得た利益を世の中のためにどう回していくか」など、渋沢が「現地で見たこと、感じたこと、考えたこと」が「引き出し」になって日本の近代資本主義、そして今も生きる企業経営哲学の原型になっています。その意味で、グローバル時代の今日においても留学の本質は変わらないのではと思います。

生意気な言い方ですが、グローバル競争における日本の競争力低下が問われて久しくなっています。企業間のみならず国家間の競争は、最終的に人材の開発育成競争に帰着致します。優れた人材の育成こそが競争力の源泉であり、大学においても「世界標準での高度で優秀な人材を育て輩出していく」ことが競争克服の本質にあると思います。「海外に身を置き、世界における日本全体のあり方を考える」機会となる留学は、科学技術の領域のみならず人材が育つ大きな契機となります。我田引水を承知で言えば、如水会の大学への派遣留学支援は、大学への単なるサポートではなく、「優秀な人材の育成輩出」という大学本来の「価値創造」に留学支援を通じて参画する、いわば「バリューチェーン」の関係として改めて捉えておきたいと思います。(事務局長)

令和2年2月号

今、同窓会が面白い
各年次が5年毎に開催する学年同窓会がそれぞれに大変盛り上がっています。「久しぶりの再会、旧交を温める」のが同窓会の本来ですが、これに「面白い」「楽しむ」が加わって「行ってよかった」ものになっているのではないでしょうか。

昨年7月以降開催の順に追っていくと、先ずは昭和63年卒の会。この日のために米国、英国、韓国、マレーシアから駆けつけた方々含め93名が参加、それだけで意気込みが伝わります。クイズの設問の一つにあった「今日の参加者のうち(子会社除く)転職3回以上の人数は?」の答えは28名、最多は6回でした。「卒業後30年、久しぶりに参加したけど予想以上に沢山来たね」が大方の声でしたが、仲間に会って自らを振り返る機会になったのではないでしょうか。

昭和39年卒の会は171名もの方々が参加、同期の能楽師・津村禮次郎師の舞は卒後55年の月日を思い起こすに十分な演出、さすがでありました。則松幹事長からの「同窓会としてはこれが最後の会」との開会宣言。皆様元気に参加しているだけに少し寂しいものがありましたが、「また元気で会おう!」と誓い合いながら「やっぱり参加してよかった」と多くの方々が感じたのではないでしょうか。

昭和54年卒の会には171名もの方々が参加、第1部では「100年人生に向けた生き方改革」をテーマに幹事長でもある関口NHK解説副委員長の進行で同期5名がパネルディスカッション。横浜市大病院医師の鈴木ゆめ氏は「認知症問題は、親世代から、今度は自分たちの心配をするステージ。認知症とどう向き合っていくかを考えるのがすごく大事」と提起がありました。もう当事者としての問題になりつつあります。弁護士の中山ひとみ氏からは「これから男性は会社を離れていくステージ。管理職や役員を経験した男性は妻に『何が言いたいんだ。早く結論を言え』、妻は『結論を求めているのではないの。とにかく私の話を聞いて欲しい』とすれ違うことが最も大きな夫婦の問題」とありました。同年代の筆者にも心あたりがあるだけに思わず頷いてしまいました。同窓会が「今後の生き方を見つめる」良い機会となったのではないでしょうか。

昭和44年卒は別名「獅子の会」、221名もの沢山の方々が参加、保坂幹事長の英語の開会スピーチは海外に多くを輩出する人材の厚みを感じさせました。女性も全体4名のうちの3名が参加、華を添えられました。今や母校の26%が女子学生の時代、OGの皆様にとっても同窓会の意義は高まっていくのではないでしょうか。
人々の意識は「会社本位」から「個人本位」に変化してきています。我田引水かもしれませんが、人と人をつなぐ絆の一つとして「同窓会」の意義もますます大きくなるのではないでしょうか。
今、同窓会が本当に面白くなっています。(事務局長)

令和2年1月号

今こそ一橋大学との連携強化の時
新年明けましておめでとうございます。如水会にとって昨年の大きなニュースの一つは、蓼沼学長の本号年頭ご挨拶にもあるように、一橋大学が「指定国立大学法人」に決定したことが挙げられます。「初荷」として前号に続き取り上げます。

文科省HP記載の決定理由で目を引くのは「ソーシャル・データサイエンス学部」の新設に象徴される「人文社会科学と科学技術イノベーションの連携に向けた新しい取組み」です。従来の「商経法社」4学部の伝統的な枠組みに加えて、文系・理系が融合した学部を新設することは、AI(人工知能)や(モノがネットにつながる)IoTの時代を先取りする画期的なことではないでしょうか。蓼沼学長は昨年10月7日の日経新聞に「AIやIoTなど科学技術の急速な発展に伴い新たな法・社会・経済の問題が生じ、その問題解決を通じて科学技術を人々の真の幸せに結び付ける社会システムの設計が急務」「様々なビッグデータの中から因果関係を読み取り政策やビジネスに生かすには社会や経済の仕組みを解明し、規範的に望ましい社会や企業とは何かを提示する社会科学の理論が欠かせない」と寄稿しています。新学部の構想の中に、AI・IoT活用の先に、将来の社会の絵姿を形作るため「どういう規範や仕組みを織込むのか」、一橋大学が社会科学をリードする存在として学部間をまたがって構想すべきテーマをまさに提示しているのではないでしょうか。

決定理由のもう一つの側面に「人材育成・輩出」「財務基盤の強化」に向けた取組みが挙げられています。一橋大学が掲げる人材構想は「グローバル・キャプテンズ・オブ・インダストリー」の育成です。「グローバル」自体は正直目新しいものではありませんが、経済学、経営学、会計学・ファイナンス、政治学・国際関係学など重点領域として設定されている学問領域が真の世界標準の人材をどう生み出していくか、その具体的方策と成果において期待したいと思います。新たに「デュアル・ゼミナール制度」と称する、英語によるゼミの導入も掲げられています。筆者の学生時代には考えられなかった英語による学部ゼミに新鮮な驚きと興味を大いに膨らませています。

「財政基盤の強化」については、既に本年4月から学費を20%値上げするとの発表もありました。人材の育成・輩出の明確な目標設定を行い、健全な財政基盤の下に発展的に進めていくというメッセージとして前向きに受け止めるべきであり、如水会の役割も、一橋大学の単なるサポートではなく、一橋大学への様々なサポートを通じて新たな「社会的価値」の創造に私たち自身も参画していく、いわばバリュー・チェーンとしての質の高い関係を作る、今こそ母校との「連携強化」の時を迎えています。(事務局長)

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